
初めてOld Havana(ハバナ旧市街)を目にした時の驚きは今でもはっきりと覚えている。町に着いたのは確か夕暮れ時だった。通りにはにかなり昔に作られ今は朽ちかけている立派な建物が続いている。その脇を50年代とおぼしきアメ車が優雅に駆け抜けていく。そして肌が黒くひょろっと背の高い人々が今まで聞いたことのないアクセントのスペイン語を発しながら行き交う。これまで見たことのない風景に強烈なカルチャーショックを受け震えた。
キューバは大航海時代以来スペインの植民地であったが、独立戦争の後1902年にスペインから独立した。でも実際はアメリカの保護国であったため、1959年にカストロ達によってキューバ革命が成し遂げられるまでの50年間は、アメリカ企業やマフィアらの活躍著しく、それはそれは豪華絢爛な世界が日夜繰り広げられたことであろう。
その名残が現在のキューバにはしっかりと残っているのだ。満足に手入れもされないまま半分朽ちているものも多いが、その当時を偲ばせる瀟洒な造りの建物がずっと続くさまは不思議な感覚を抱かせる。ちょっと表現が適切じゃないけれど、あえて言うならば『かつて栄華を誇った現在のゴーストタウン』で人々が生活しているような感じだ。おそらくほとんどの人が経験したことのない感覚なんじゃないだろうか。
こういうところに身を置いて“感じる”ことこそ、旅の醍醐味だ。本当は旅の楽しさって、買い物やおいしいものを食べることや、何かのアトラクションに一喜一憂することなんかじゃなくて、生まれて初めて経験するそこの空気に心を解放することだと思う。キューバはそれを可能にしてくれる。この島は、物欲と効率化でピンボケ&不感症になった僕らの目を覚ましてくれる。
PR