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メキシコ、カリフォルニア、日本 暮らしへの好奇心は尽きない
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奴らを黙らせろ、カントリーメン



ぞうきん柄の安っぽい上着に、くたびれたジーンズ。
野球帽を前後ろ逆に被って、その男はステージに現れた。

アメリカンアイドルの会場を埋めている着飾った人々。
高そうなジャケットに身を包んだ審査員は、「場違いな奴が来やがった」
と顔をゆがめ、男が歌う曲を説明し出すと、小ばかにしたように笑う
別の審査員。

男は失業中だった。
以前は農場でニワトリを捕まえる仕事に就いていたと。
6人で6万匹のニワトリを捕まえるんだよと飾らずに
話す男に会場から笑いがもれる。
明らかにその男はその晩、よそ行きの恰好をした観客で埋まった会場で、
ただ一人、浮いた存在だった。

見た目と同じく、さえないであろう歌声を笑ってやるぞと
待ち構える聴衆のざわめきが、会場から静かに聞こえてくる。
やがてギターのイントロが流れ始め、
男の口から第一声が放たれた。

「もし、明日、自分がこの世からいなくなってしまうとしたら、
ベッドで安らかに眠っている目の前の彼女をどんなに愛しているか
十分に伝える努力をしてきただろうか?

もし自分の明日が来ないとしたら、
これまで捧げてきた愛で、この先も十分だろうか?」

それは、落ち着いた、意思のある、良く通る声だった。
決して順風漫歩な人生ではないけれど、腐るわけでもなく受け止めて
やってきた男の生き方がその声には反映されているようだった。

虚飾のないストレートな声に静まり返った会場。
次の瞬間、会場からは割れんばかりの拍手と歓声が湧き上がった。
彼の声はその日そこに集まった聴衆の心を震わせた。

それに接すると、一瞬にして目の前の世界が変わるものがある。
それは、本質を含んだもの。つまり、本物だ。
多くの者は知識や洋服で自分を飾り立てようとする。
何故なら、そうしなければ社会の中での自分が保てないから。
中身がないことがばれる怖さに耐えられないから。

しかし、本物は違う。
それさえすればいいことを、本能的に知っているから。
どんな人の中にもそれはあると言われる。
ただし、それが出来るのは、
全てを失っても怖くない大たわけ者か、全てを失ってもいいと覚悟を
決めた勇気の人なのだ。

(上の歌の歌詞)
"If Tomorrow never comes"
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WELCOME TO Move On

異文化と自然を愛するイグアナ楽団のページへようこそ。これまでメキシコとアメリカに合計10年住んできました。それ以来人生の歩き方をテーマとして追い続けています。海外を旅するといつも考えさせられる豊かさとは何か。それについて思ったことを書いていきます。
プロフィール

HN:
イグアナ楽団
性別:
男性
自己紹介:
好きな言葉:「生きていくうえでもっとも大切なことは、自らを律し、可能な限り自分に正直であること」
by Robert Redford

mail : cocovenice@gmail.com
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