
アルゼンチンに滞在中、やはりサッカーの試合を、そして出来ればBoca Juniorsの試合を見に行きたいと思っていた。ちょうど滞在していた友人の家がアルゼンチンタンゴ発祥の地の観光名所"Caminito"の脇にあり、Boca Juniorsのスタジアムまで歩いて3分だったこともあって、直接スタジアムまでチケットを求めに行った。
すると、ホームでの試合はちょうど昨日行われたので次は2週間後とのこと。2週間後にはここにはいない。果てどうしたものかと思案していると、友人が「River Plateもブエノスアイレス拠点のチームでスタジアムまで電車で行けるよ」とアドバイスしてくれた。そこでネットカフェに直行しRiver Plateの試合を調べてみると、ちょうど今日の午後San Lorenzoとの試合が行われることが分かった。そこで当日券に賭けてみることにし、スタジアムに向かった。
少し早く着いたので、レストランでステーキとビール+ワインを腹に収め、スタジアムの方へ歩いて行った。途中続々とRiver Plateのユニフォームやチームカラーの赤を着た集団が歩いている。もう赤一色でほかのチームのシャツを着ていたら大変なことになりそうだ。実際、試合前後には町のあちこちでチーム間の乱闘騒ぎが起きるらしい。特にBoca JuniorsとRiver Plateの試合は"clasico"と呼ばれる日本でいう巨人阪神戦のような伝統試合なので荒れるらしい。
スタジオに着くと、もう戦いの前哨戦は始まっていた。お互いのコアなファン同士が金網越しにやじを飛ばしあっている。既にかなりなハイボルテージだ。アルゼンチンのスタジアムではアルコール販売はしていないのでみんな着く前にたらふく仕込んで来たのだろう。幸いチケットを買うことが出来、スタジアムの中へ入っていった。
中はすごかった。人人人だ。しかも赤一色。すでにRiver Plateのチームソングの大合唱が始まっている。すでに上半身裸の人がかなりいる。遠くのほうにアウエーのSan Lorenzoのファンがいる一角がある。観客のいない緩衝地帯を置いて金網で囲まれしかも両端には警官がどっさり張り付いている。間違えてあそこのセクションの席を買わなくて本当に良かった。もし買っていれば今ここにはいなかったかもしれない。
そのうちいつのまにか試合が始まっていたが、僕はまわりを観察しているほうが面白かった。吠える人、泣く人、踊る人、歌う人。もう何でもありだ。おまけに上のほうを見ると、人が鈴なりになっているところがある。誰か落ちないかハラハラしてもう試合を見てるどころじゃなかった。
ハーフタイムでトイレに行った。ここがまたすごかった。エキサイトした観客が殺到してえらいことになっている。しかし、はるばる地球の反対側から来たちっぽけな島国の住民は彼らの生態を見逃さなかった。用を足すと誰もが頭を水で濡らすのだ。そしてその濡れた髪をオールバック風にかき上げると、「どうだいい男だろ!」とでも言わんばかりに鏡に一瞥をくれると何事もなかったかのように出口に向かう。それがほぼ例外なしに若いのから年寄までみんな同じことをする。
アルゼンチンのサッカーの思い出はと聞かれると、残念ながら僕はその光景しか覚えていない。
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