カイロの日本人向けバックパッカー宿の本棚。年季の入った本が無造作に並べられていた。

みんなが置いていきゆっくりと時間をかけて溜まったものだ。比較的面白そうなのは旅人に持っていかれ、お呼びのかからなかったものがひっそりと余生を過ごしている感じ。20年近く居座ってそうなツワモノも紛れ込んでいて、どことなく聖域化している。
旅に連れてこられた本は、重いバックパックの最下部に敷かれペチャンコになり、ジーンズの尻ポケットに入れられ汗でゲショゲショになり、メモ帳として数ページ引きちぎられ、ゴキブリとの戦いで返り血を浴びたりの試練をくぐり抜けてようやくここに辿り着いたんだろう。
かなり古い本が多いけれど日本の本が並ぶこのスペースに身を置いているとほっとする。例えるなら旅先で日本大使館に駆け込んだときの気分に近いかもしれない。知らないところを勝手に歩き回って疲れるという身勝手な自分を、それでも愚痴一ついわず迎え入れてくれる。何だか、年老いた人格者のじいさんのようでもあるね。
今日もカイロ日本人宿の本棚に鎮座する本たちは、日本の喧噪など我関せず、古き良き時代のテーマを背に掲げのんびりとけだるい午後のひと時を楽しんでいるに違いない。疲れた旅人の訪れを待ちながら。
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