忍者ブログ
メキシコ、カリフォルニア、日本 暮らしへの好奇心は尽きない
[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

カリフォルニア・ガール

ある朝、自分のアドレスに見慣れぬ英文メールが届いていた。
「誰だろう?」
それは、ベニスビーチに住む生粋のカリフォルニアガールのココからのものだった。

彼女は約11年前にベニスのレストランで一緒に働いていた元同僚だ。当時フロントをやっていた僕のアシスタントということで週に2度ほど働きに来ていた。

大きな目と笑顔がとてもチャーミングな陽気な女の子で一緒にいる人をとにかく幸せな気分にさせる子だった。客あしらいが上手な彼女と働くのは楽しかった。当時このアシスタントのポジションには3人女の子が日替わりで働いていた。ジャズシンガーのケイコ、リトル東京の化粧品販売店でも働きながら両親と暮らすカオリ、そしてこのココ。どの子も一緒に働いて楽しかったが、生まれも育ちもこの近所の生粋のロコガールのココはどうやら僕の記憶の中の特別室に納められているようで、何年たってもあのときの光景がすっと蘇る。

いつも個性的なファッションで現れる彼女は、仕事中もフワーッといなくなり、「どこ行った?」と探すとあちらで客と談笑してる。まあ地元だから顔馴染みが多いからしょうがないんだけれどね。それにしても、大きな目を輝かせながら、白い歯からこぼれ落ちる笑顔をあたりに振りまき、それでいてゆるぎない主張を持つ彼女からは、これまで見たことのないタイプの女性像だった。それが僕にとっての初めてのカリフォルニアガールとの出会いだ。そんな彼女は、将来不動産ブローカーになりたいと時おり熱く僕に語っていた。

実は2年前にLAにほんの少し滞在したときに、昔働いていたこの地区にまで足を延ばし、新しくできたコーヒー屋に座って外をぼんやり眺めながらコーヒーを飲んでいた。そしたらどこかで見たことのある女の子が店に入ってきた。なんとそれはココだった。一目ですぐ分かった。〈昔のまんまチャーミングだ!でもどことなく大人になったな!〉すかさず歩み寄って話しかけた。「俺のこと覚えてる?8年ほど前にXXで一緒だったXXだよ」。すると、「オフコース!」という言葉があの懐かしい笑顔とともに返ってきた。それから結婚したこと、子供が出来たこと、不動産屋で働いていることなんかを立ち話で聞かされた。そうかあ、夢がかなったんだね。彼女が元気そうで、幸せそうで、変わらずにチャーミングだったことが何だかとても嬉しかった。

それから別れの挨拶を交わすと、これから仕事だという彼女はテイクアウトのコーヒーを片手に持ち赤いスカートをはためかせながら颯爽と表に飛び出していった。あれじゃあまるで歩く太陽だ。

わずか数分間の8年ぶりの再会だった。僕はそれからもう一度座り直してコーヒーを啜った。いろんな思い出が頭を駆け巡った。当時結婚していたこと。仕事が遅く毎晩夜中の2時に帰宅すると妻がご飯を用意して待っていてくれたこと、地元の日本人からとんでもないポンコツ車を掴まされたけど、最終的にイラン人に転売できたこと。LA空港の近くのポイントで何度か波乗りしたこと。ハリウッドのタイ料理屋やウェストミンスターのベトナム料理店に暇をみつけては足を運んだこと等々。そのうちにそれらは全て過ぎ去った過去のことであることを思い返すと、頭の中でかかり始めた『ホテルカリフォルニア』のメロディと相まってすこし切ない気分になり、あわてて店を出て車に飛び乗ると高速の流れに身を紛れ込ませた。


さて、舞い込んできたメールはココからのものだった。一斉配信されたらしいそこには新しいブローカーに移ったことが書かれていた。都内のビル街での仕事中に読んだそのメールによって、心は瞬時にベニスに飛んだ。カリフォルニアの青く広い空。生い茂る街路樹と広々とした家々が連なるベニスのシーサイド。その中で家族に囲まれ今日もとびっきりな笑顔で暮らすココ。

そのとき、タバコ臭いオフィスのうざったいPCのモーター音が一瞬止み、そよ風が頬を撫でて行った。
PR
コメントを投稿する

HN
タイトル
メールアドレス
URL
コメント
パスワード
無題

久しぶりにLAの風のにおいを思い出しました。LA空港をでてPCHを車で走っている感じが思い出されます。
空気が肺の奥まで入り込むように思いっきり呼吸ができました。
日本では呼吸をしているんですが、空気が肺の奥深くまで入らないんです。
いつか帰ってみようかな。
中島さん

そうです。たまには里帰りして、Lincoln Blvd.やLa Cienegaを車で流してあげないと。それで一杯のコーヒを飲みたくなって入ったカフェでドラマは始まるんです。今の日本はほんと空気が不味いですね。それにドラマも起きにくい。嗚呼。
カウンター

WELCOME TO Move On

異文化と自然を愛するイグアナ楽団のページへようこそ。これまでメキシコとアメリカに合計10年住んできました。それ以来人生の歩き方をテーマとして追い続けています。海外を旅するといつも考えさせられる豊かさとは何か。それについて思ったことを書いていきます。
プロフィール

HN:
イグアナ楽団
性別:
男性
自己紹介:
好きな言葉:「生きていくうえでもっとも大切なことは、自らを律し、可能な限り自分に正直であること」
by Robert Redford

mail : cocovenice@gmail.com
人生のお買い物

最新コメント

[05/13 Backlinks]
[03/25 イグアナ]
[03/17 ハナ]
[02/05 ハナ]
[09/24 イグアナ]
最新トラックバック

アクセス解析

バーコード