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メキシコ、カリフォルニア、日本 暮らしへの好奇心は尽きない
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あるメキシコ人労働者の夢

北風が吹き始める季節になると思い出すことがある。季節は秋。働いていたベニスビーチでもちょうどこんな風が吹いていた。

当時僕は寿司レストラン(注:リンクを開くとすぐ音が出ます)のフロントをやっていた。寿司レストランといっても一風変わったところだった。白い壁には現代アート。メニューにはフレンチのサイドディッシュ。閉店を知らせる音楽には、Eaglesの『Hotel California』。深夜のベニスビーチで聞くHotel Californiaの哀愁を帯びた曲調は、酔った客だけでなくそこで働く従業員の心にも沁み、居合わせた人はみんな郷愁のようなものにかられ不思議な連帯感でつながる。そんな不思議な店だった。

夜が更けてくると徐々に客が引き上げていき、それまでの喧噪が嘘のように落ち着いてくる。訪れる客が途絶え、あとは今いる客が帰るのを待つだけになるとフロントに束の間の空白が訪れる。そういうときは表の駐車係も暇になり、ふらっとフロントに無駄話をしに来るのだ。

当時駐車係を務めていたのはトーマス。身長180cmを超す痩せた長身で、鼻の下にひげを蓄えたスペイン系のメキシコ人だ。彼はSan Luis Potosiというメキシコ中部の乾いた町からやってきた。スペイン人達が支配していた当時、銀の産出でにぎわったコロニアルの町だ。彼も元々は不法入国者だった。メキシコとアメリカを分けるRio Grandeを泳いで渡り、灌木の間を腹這いでくぐり抜け何とか国道に出たらしい。そのときちょうど目の前に警察がいたらしいが、白人の血が勝る彼は怪しまれることなくその場を切り抜けたと笑って話していた。

そんな彼はいつも僕に夢の話をした。

「San Luis Potosiには地中に財宝の埋まっている家がたくさんあるんだ。どうも革命のときに埋められたりしたものらしい。家の持ち主が気づいているものといないものがあるんだよ。でも気づいている家の主は絶対に掘らせはしない。悪霊にたたられると思っているからね。俺は宝が眠っている家をいくつか知っている。いつか戻ったら必ず掘りに行きたい。そのために金を貯めてるんだ」

いい匂いが漂う明るく暖かな店内と対照的に、大西洋を渡ってきた夜の冷たい風が吹きぬけるWindwardアベニュー。そこに立ち続け深夜まで車を移動し続ける男の目には何が映っていたんだろう。いつか宝探しを成功させ大金を手に入れて、中にいる連中のように高いワインを開け旨いものに舌鼓を打つ自分の姿だったんだろうか。それから少し経って駐車係は別のメキシコ人に替わっていた。ほどなくして僕もメキシコに戻った。

冷たい北風が吹き始めると、あの長身で痩せたメキシコ人のことを思い出す。彼は無事に宝を掘り当てたかなと。そして幸せに生きているかなと。
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チカーノライフスタイル 映画"Sangre por Sangre"

映画をひとつ紹介したい。

その名は、"Blood In Blood Out"("Sangre por Sangre")。70年代のイーストロサンゼルスを舞台に、若いメキシコ系ギャング達の苦難に満ちた人生が展開していく物語。3時間を超える大作だが、見始めると席を立てなくなると思う。殆んどの人が見終わると『むぅぅ。。』と唸ってしばらく放心状態が続くはず。とてつもない名作映画だと多くの人が認めている作品だ。

この映画の背景には、貧困、差別、民族アイデンティティ、家庭問題、犯罪、ドラッグ、民族対立とアメリカ移民の貧困層が直面する問題がたっぷりと練りこまれている。でも、『ここは安全な日本だから』なんて思ってはいけない。俳優たちの魂のこもった演技が安全地帯で見ている僕らを否応なしにあちらの世界に引きずり込んで、平和ボケして伸びきった脳みそにハイボルテージな電流を流してくれる。

ひたすら重いテーマだけれど、チカーノギャング達の話す独特のスペイン語とファッションにも注目して欲しい。アイデンティティとオリジナリティを大切にする彼らの生き様が伝わってくる。

Buena Suerte, Carnar !!



メキシコの仕事仲間たち



この写真の迫力ある美女(?)達は、メキシコで働いていたときのSPAの仲間でテラピスト達だ。もともとはみんなもっと若かったんだけど、月日が経ち徐々に貫禄がついて行った。写真のほとんどの女性には既に子供がいる。

このスパには合計この3倍のテラピストがいる。彼女たちは早番、遅番で交代し、さらに日にちを調整して働いていた。1セッションごとに決まった額のコミッションをホテルから受け取り、毎月8000ペソ(当時のレートで約800ドル)ほどの稼ぎだったが、普通のホテルスタッフの稼ぎがその半分位だったのでかなりの高給取りだ。さらに1回あたり10ドルほどのチップも受け取り、これが彼女たちをさらにパワーアップさせる原動力となった。

昼はホテルの従業員食堂でメキシコ料理のランチが食べれるが、繁忙期には自分たちでトルティージャ+肉やらを炒めた具材やらパパイヤなどのフルーツを持ってきて、控室でかじっては仕事に出かけて行った。一度韓国のりを持っていって彼女たちに食べさせたら、ほとんどの者は気持ち悪そうに残していたっけな。当時メキシコで寿司を食べるのは中級から上のクラスだったからしょうがなかったんだけれどね。

アンヘリカ、アナ、モニカ、ルールデス、イサベル、スージー、ミランダ、アレハンドラ、マルガリータ。名前は可愛いけれど、実際はたくましいメキシコの仲間たち。今日も大家族を養うためにスーパーヒーローのごとく頑張っているんだろうなあ。
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WELCOME TO Move On

異文化と自然を愛するイグアナ楽団のページへようこそ。これまでメキシコとアメリカに合計10年住んできました。それ以来人生の歩き方をテーマとして追い続けています。海外を旅するといつも考えさせられる豊かさとは何か。それについて思ったことを書いていきます。
プロフィール

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イグアナ楽団
性別:
男性
自己紹介:
好きな言葉:「生きていくうえでもっとも大切なことは、自らを律し、可能な限り自分に正直であること」
by Robert Redford

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