アンマンのダウンタウンに、HABIBA(ハビーバ)というテイクアウトのスイ-ツ屋がある。ここがとんでもなくうまくて、連日連夜大勢のヨルダン人で賑わっている。そんな彼らは口を揃えて、「ヨルダンで一番うまい菓子屋だよ」とのたまう。もちろん僕も毎晩通った。

ここでは、カナーファやオスマイリアと言われるアラビア菓子の出来立てアツアツを提供している。カナーファは薄焼きの生地の中にクリームやチーズ(淡白な羊のチーズのよう)が挟まっていて、その上からシロップをかける。オスマリーエは、生地の上にチーズを乗っけてオーブンで焼き、その上に細い麺のようなものを素揚げしたのが乗っけて同じくシロップをたっぷりとかける。このシロップをかけると日本人の自分には甘すぎるので、シロップをスプーンで削り落として、尚且つハーフサイズ(元気よく“ノス!”と言おう)を注文した。

毎日午前0時までの営業で、特に夜の11時ごろに行くと、アンマン中の腹ペコ野郎がこのスイーツを求めにやってきて、日夜真剣勝負が繰り広げられている(写真の男どもの熱いまなざしに注目!)。このハビーバは他にも店舗があるが、このダウンタウンの路地を入った支店は男性客が殆どで女性はたまに外で連れの男性が買ってきたのをぱくついてるのを見かける程度。客の多くは店の外で立ち食いして去っていくので、きちんとゴミ箱が設置されているのだが、4割はその辺に捨てていく。一度それをたしなめているおじさんを見かけたら、言われた高校生くらいの男はしぶしぶ従っていた。

ある夜、1人の“いい顔”に目が留まった。実に幸せそうないい顔をしてる。なんていうか、嬉しくてたまんないっていう表情。この菓子を子供の頃からずっと食べ続けてきて、本当にこの菓子を愛しているっていう顔だ。思わず唸らされた。そしてその夜は人の幸せというものについて深く考えさせられた。幸せって思ったより身近なところにあるのかも。貪欲に、より複雑な中からベストなものを見つけようとするから、幸せは逆に逃げて行ってしまうものなのかもしれない。

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