
この夏に京都に行ったときにあるゲストハウスを訪れた。その建物は以前薬屋だったとのことで、入り口には受け渡しの窓口などがそのまま残され、それが逆に今の宿屋の帳場としてもうってつけとのことだった。
それにしてもこういう木で作られた内装は心が休まる。そこに時間の経過が加わるとさらに魅力が増す。木が大きな視覚的効果を与えているのだろう。今の時代、昔作られた古い建物からは効率一辺倒の世界にはない価値観を感じる。人はそんなことを無意識に感じ取っているのだろうか。
これと対極にあるのが現代のオフィスだ。コスト第一に考えられたその内装は当然ながら無機質なものになる。手入れしやすく、交換しやすく、耐久性があり、値段が安いことが求められるそれは、働く人の居心地など考慮に入れていない。入れていたとしても順位はかなり後ろのほうになる。そんなところで働く人の心が休まることはない。ビジネスの現場は忙しいものだから心を休めている暇はない。だから居心地のいい職場なんていらないという人もいるだろう。しかし忙しい現場だからこそ、長い時間を過ごす職場の環境は出来る限り働く人のことを考えたものにするべきだ。
まず、あの白一辺倒の壁の色をやめたほうがよい。あれでは神経が休まらない。オフホワイトやアース系の落ち着く色にする。そして木製の額縁などを壁面に設け変化をつける。次に明かりだが、基本は蛍光灯になるだろうが、フロア全面をそれにしてしまわないで部分部分のトーンが変えられる明りも採用したらどうだろうか。そうすれば同じフロアーがいくつかのセクションに分かれ、働く人の気持ちにメリハリがつくと思う。多人数の会議は明るめのセクションで行い、デスクワークに集中したいときは少し照明を抑えそこだけに明るいデスクライトが当たるようにするとかだ。そして最後は昼寝スペースを設けるのだ。昼休みなどに15分横になるだけで疲れた体はぐっと回復する。
それ以外にも保育所の設置とかいろいろあるがこれはまだまだ現実的ではないのでここでいうのはやめておこう。せめて働く人の精神衛生がきちんと守れる職場が増えることを切に願う。その鍵は、企業は働く人の心身の健康を大事にすべきだという社会の風潮の伝播にある。
PR