
この絵は、あの映画エイリアンの原作者、H.R.ギガーのもの。
これはメキシコで手に入れたものだけど、これを見るときはいつも当時メキシコで友人だったスイス人のロルフを思い出す。時は16年前にさかのぼる。当時メキシコシティのソナロッサ近くに住んでいた僕は、たまたま休暇で行ったサンミゲル・アジェンデのバーで彼と出会ったのだけど、メキシコシティに戻ったら実は家が近かったということでよく遊びに行くようになった。彼はこんな感じのアートの卸のような仕事をしていて、彼自身アートのコレクターだった。実はH.R.ギガーも彼の親しい友人なのだ。まあ、それはいいとして、自由人の彼の家にはいつも人、特に女性がいて、どの女性も気だるさを漂わすボヘミアンタイプだった。
でかい獅子鼻がさらに沈没して顔の真ん中でどうにか踏ん張ってるような顔をしていた彼は、顔の通りまったく物事にこだわらない気さくな奴で(当時50位のおっさんだったが)、何となくフィーリングがあった僕は、暇を見つけては遊びに行き、アパートの入り口のベルを鳴らすといつも彼があのボクシングで打たれまくったあとのような顔を窓からぬっと突き出すのだった。
今思い出しても奴の笑った顔を見たことがない。自分で面白いことを言っても決して笑顔は見せなかった。いや、あの顔だから笑顔に見えなかっただけかもしれない。奴ときたら、いつも自分の気に入った絵や面白いもののことを熱くどちらかというと一方的に僕に語ってくるのが常なのだ。でもお陰で、いろんなことを教えてもらった。
人生でもう一度会いたいひとがいるとしたら、ロルフはその中のひとりだ。でも何だか、奴と何十年ぶりに会っても、まるで昨日も会ったかのような感じでお互い普通に話し始めるんだろうな。